顎関節症の診断基準について解説
顎関節症が発症する要因は、「顎の関節の問題」「筋肉の問題」「ストレス」など非常に複雑です。世界的に見ても共通した定義の無い病気と言われています。そこで、日本では顎関節症のあいまいな診断を避けるために、日本顎関節学会が診断基準のガイドラインを定めています。
この記事では、顎関節症のガイドラインを分かりやすく解説するとともに、一般の人でも簡単にチェックできるように主な症状について解説します。
顎関節症の診断基準
ご自身が「もしかして、顎関節症ではないか…」と思ったら、日本顎関節症学会が定める顎関節症の診断基準を一つの参考にすると分かりやすいでしょう。
そこでは顎関節症の症例をもとに大きく5つに分類されています。
顎関節症I型
顎関節症I型は、咀嚼筋(そしゃくきん)という顎周辺から側頭部にある筋肉群になんらかの障害が起きることで発症すると定義されています。
咀嚼筋障害の主な原因には、「歯ぎしり」「食いしばり」「噛みしめ」などがあります。いずれも咀嚼筋を過剰に運動させる悪い癖です。このような咀嚼筋へ負担をかける悪い癖によって「筋肉の収縮」「過緊張」が起こります。結果的に、「血流悪化」「炎症」「神経の圧迫」などから筋肉に張りや痛みが現れます。
また、側頭部の筋肉の収縮から頭痛などの症状も起こります。咀嚼筋の異常は周辺の筋肉にも影響するため、首こり・肩こり、目の痛みなどの症状も引き起こされます。
一方で、「口を閉じたままの状態での痛み」「顎を指で押したときに痛みが生じる」ような症状は顎関節症I型に該当しません。
顎関節症II型
顎の関節は上顎と下顎が蝶つがいのようにつながっています。このつながり部分にある靭帯や関節包、関節円板後部組織の異常によって起こる症状が顎関節症II型です。
顎に負担をかける食事、顎を圧迫する悪い癖、顎への衝撃などにより「関節の靭帯や組織が傷つく」「ねん挫」のような状態になります。
日常生活で以下のような生活習慣がある人に多く見られますので注意が必要です。
・偏咀嚼(片側噛み)
・固い食べ物を好んで食べる
・頬杖
・うつ伏せ寝
・大きなあくびの頻発
顎関節症III型
関節円板(かんせつえんばん)の障害が原因により発症するのが顎関節症III型です。関節円板は上下の顎の間に位置しており、顎関節がスムーズに動くためにクッションのような役割を果たします。繊維状のような組織でできており、下顎頭(かがくとう)という下顎の骨の動きに合わせて動くため、骨同士の衝撃を和らげて圧力を分散する働きをします。
この関節円板は、顎のねじれや歪み、噛み合わせ悪化により、下顎頭から前に押し出されることがあります。(まれに後方に転位するケースもあります)
それによって、下顎窩(かがくか)という上顎の骨と下顎頭が接触することにより「ジャリジャリ」「ガリガリ」というクレピタス音がします。また、口を開けたときに下顎頭が関節円板を前に押し出すため「コリッ」「ボキッ」というようなクリック音が発生することもあります。
関節円板の障害によって、「関節雑音」「開口障害」「関節痛」などを発症することがあります。
顎関節症Ⅳ型
顎関節の骨の変形によって起こる症状が顎関節症Ⅳ型です。「変形した骨の周囲に新たな骨が作られる」「関節円板の後ろにある結合組織が前側に引き込まれて穴が開く」などにより、上顎と下顎の関節は直接すれ合うため、「ギシギシ」または「ゴリゴリ」というクレピタス音が生じるようになります。
症状としては「顎関節の痛み」「開口障害」などが現れることがあります。
また、中には骨が変形しているものの「症状として現れない」「進行が途中で止まる」というケースもあります。
顎関節症V型
顎関節症のV型とは、「他覚症状を伴わない顎関節痛・筋痛」のことです。他覚症状とは本人以外の人が捉えることのできる症状のことです。つまり「患者が顎関節症の症状を訴えたものの、医師など専門家が診察しても原因が分からない」という顎の痛みの症状です。
V型の原因として考えられるものには、「心理的な要因」「自律神経のバランスの乱れ」などがあります。
顎関節症の3大症状で診断してみる
ご自身が顎関節症かどうかを診断する際には、I型~V型と合わせて顎関節症の代表的な3大症状を判断基準にしてみると良いでしょう。
顎が痛い
顎関節症になると顎の痛みが発症することがあります。顎関節症による顎の痛みは大きく2つに分けられます。「顎関節の神経・靭帯を圧迫することで生じる痛み」「口を開け閉めする際に生じる咀嚼筋痛」です。
痛みが出るシチュエーションには「睡眠時の歯ぎしりで朝起きた時に顎が痛い」「硬いものを食べた時に顎が痛む」というケースがよくあります。
痛みの程度は症状の進行具合によって個人差がありますが、顎の痛みをそのまま放置することで、頭痛、耳鳴り、めまい、など全身に症状がでることもあるため早めの改善が重要です。
【症状】
・口を開けたときに顎が痛む
・固いものを食べると顎が痛む
・顎からこめかみにかけて痛みがある
口が開かない
顎のズレや歪みなどから関節円板が前にズレると下顎の骨が引っかかるため口を開けられない状態になります。いわゆるクローズドロックという顎周辺の機能障害、開口障害です。
ご自身が開口障害になっているかは、口の中に指を3本縦にして入るかどうかが一つの判断基準となります。また、開口障害と同時に顎を上下と前後左右にスムーズに動かせない場合も顎関節症を発症している可能性があります。
【症状】
・朝起きたときに、顎をスムーズに動かすことができない
・下顎が引っかかる。ときどき動かくなくなる
・口を開けることはできても、左右で開けづらさに違いがでる
・口の中に人差し指・中指・薬指の3本を縦にして入らない
※顔や口が小さい人は指2本が入らない
顎を動かすと音がする
顎を動かした時に「ジャリジャリ」「ジョリジョリ」とクレピタス音がする。「カクッ」「コキコキ」とクリック音がするというのも顎関節症の代表的な症状です。
顎から音が鳴るのは、健康な人でも半数が経験しているといわれていますが、顎関節症になると口を開閉するたびに顎から音が頻ぱんに鳴ることがあります。これは、顎関節の異常によって生じるもので関節円板内の下顎の骨が擦れたり、ぶつかることで起こります。
顎の音が鳴る回数が増えてきたら、それは顎関節症が進行している可能性が高い証拠です。早めに専門医への相談が必要です。
顎関節症の診断は専門医へ
顎関節症は顎周辺の不調から始まり全身症状にいたる怖い病気です。痛みの諸症状だけでなく、顔や体の歪み、倦怠感やメンタル面の不調など、身体と心に深刻な症状があらわれます。もしも、顎関節症の診断基準の中に該当する箇所が複数あるようなら、早めに専門医を受診することが大切です。
新宿デンタルオフィスでは、顎関節症の症状で不安を持つ方、治療を検討している方に、まずは初診カウンセリングをご提案しています。1回3~4時間をかけて専門医がじっくりと診察をおこないます。
ご自身の顎関節症の症状がどの程度なのか、診断を受けてみることで問題点や改善方法が明らかになります。お電話にて予約を承っていますので、お気軽にご活用下さい。