咀嚼筋の痛みは顎関節症?
咀嚼筋(そしゃくきん)とは、顎、頬、頭部にある筋肉で、咬筋・側頭筋・外側翼突筋・内側翼突筋のことを言います。口を開け閉めしたり、食べ物を咬んだりするときに出る痛みは、この筋肉群に過緊張が起こっていることが考えられ、「咀嚼筋痛障害」という、顎関節症に分類されます。
咀嚼筋とは、どのような役割をする筋肉なのか一般的にはあまり知られていませんが、顎関節症に関わる重要な筋肉です。
この記事では咀嚼についての基礎知識とともに咀嚼筋痛障害について解説します。
咀嚼の役割と重要性
物を咬んで食事をするとき、歯や顎、筋肉を使って咀嚼をおこないます。
上下の歯で噛む時には下顎を動かしますが、その下顎を動かす筋肉が咀嚼筋群ですが、その働きは、脳の神経に支配されています。また、咀嚼することで、脳が活性化されるなど、人間の生命を維持する上で重要な役割を果たす筋肉なのです。
咀嚼力が弱くなった現代人
現代の日本人の食生活は、洋食化、インスタント化、ファストフード化が進み昔と比べて柔らかいものを食べることが多く、咀嚼回数が大きく減りました。かつての日本人は雑穀を多く食べており、さらに時代をさかのぼると木の実、干し肉、干物など硬いものを食べていました。
それが現代では咀嚼回数が大幅に減ったことにより日本人の顎は細く弱くなったと言われています。その影響もあってか顎が細い現代人は顎関節症を発症するケースが増加しています。
咀嚼力が低下すると、顎関節症だけでなく様々な疾患に繋がることが考えられ、咀嚼力の低下は健康を考えたときに大きなリスクであることが分かります。
咀嚼筋と咀嚼筋痛障害とは
咀嚼において重要な役割を果たす咀嚼筋は、閉口筋である「咬筋(こうきん)」「側頭筋(そくとうきん)」「外側翼突筋(がいそくよくとつきん)」「内側翼突筋(ないそくよくとつきん)」などから構成されます。
食べ物を噛んだり、噛み切る時には、下顎を上下・左右に動かしますが、その際に咀嚼筋群の働きにより円滑に咀嚼ができるようになります。この咀嚼筋に障害が起きると「満足に食事ができない」「好きなものが食べられない」という問題とともに顎関節症の発症リスクも生まれます。
咀嚼筋痛障害とは、咀嚼運動時の「食事中」や「口を開け閉めするとき」に痛みが生じる症状です。筋肉は本来なら緊張と弛緩を繰り返して毛細血管の血行を良くしますが、咀嚼筋が硬直することで血管を圧迫して血行を悪くします。そのため、痛みやこりという「咀嚼筋痛障害」が生じるのです。
咀嚼筋痛障害と顎関節症の関係
歯の噛み合わせが悪くなって、咀嚼筋痛障害が発生するのは、咀嚼筋が働き過ぎて過緊張を起こしていたり、アンバランスになっていることが考えられます。
悪い歯並びによる不正咬合
歯並びが悪い状態を不正咬合(ふせいこうごう)と言いますが、その種類も「出っ歯」「受け口」「乱杭歯」など悪い歯並びはたくさんあります。一般的に歯並びが悪いと噛み合わせも悪くなります。その結果、アンバランスな咬合力が咀嚼筋をアンバランスにすることになります。
人間の歯並びは「歯の摩耗」「老化」「虫歯」などが原因で常に変化します。悪い歯並びになって噛み合わせの不調から、筋痛、側頭筋の痛みによる頭痛が生じたら、それは顎関節症のサインですので早めに改善する必要があります。
歯ぎしり・食いしばりによる咀嚼筋痛
歯ぎしりや食いしばりを毎日頻繁におこなっていると当然ながら咀嚼筋に過度な負担をかけ続けることになります。筋肉は過度な緊張から血行障害により炎症が生じてそれが次第に筋痛へと変わります。
また、朝目が覚めたときに顎の痛みとともに頭痛がすることがありますが、これも強い歯ぎしりにより、こめかみに位置する側頭筋を引っ張っていることにより起こります。このように、歯ぎしり、食いしばりは咀嚼筋群や顎関節に大きな負担をかけることになります。
虫歯による片側の咀嚼筋への負担
ただでさえ咀嚼数が少ない現代人ですが、虫歯を患うとさらに咀嚼回数を少なくします。また、虫歯がある方で噛むことを避けるために「片側噛み」という偏った食べ方になるため左右の咀嚼筋がアンバランスになります。一方の筋肉は頻ぱんに使うことで強く引き締まりますが、もう一方は使わないことで筋肉が弱くなります。このようなアンバランスな咬合力は、下顎を歪める原因にもなります。
咀嚼しないと歯周病が進行する
また、何らかの理由で咀嚼回数が減ると唾液の分泌が少なくなります。唾液は口腔内の細菌を洗い流す作用がありますが、咀嚼が減り、唾液が減ることにより歯周病菌が口の中に残ってしまい歯周病を進行させます。歯周病が悪化すると歯がグラついたり、虫歯の原因にもなります。
虫歯や歯周病は前述したように噛み合わせの悪化を招き、それが咀嚼筋群にも悪影響を及ぼします。
咀嚼筋に違和感、痛みを感じたら専門医へ相談すること
虫歯、歯の欠損などが原因で容易に噛み合わせが変わり、その結果、咀嚼筋痛障害が起きることが多く、また、「関節性」の顎関節症へと進行するケースがあります。
顎の痛み、筋肉の違和感や痛みは顎関節症の症状です。そのような症状でお悩みの方は早めに専門医にご相談ください。新宿デンタルオフィスでは、当院にて初診カウンセリングをおこなっていますのでお気軽にご相談ください。(予約制 1回3~4時間)