不正咬合は顎関節症のはじまり?
不正咬合とは、悪い歯並びによる噛み合わせが悪い状態のことです。歯並びの悪さは一目見れば分かりますが、心配なのはその見た目だけの問題ではありません。不正咬合をそのままにしておくことで日常生活や健康上の様々なリスクが生じます。
また、不正咬合(ふせいこうごう)で噛み合わせの悪化が進行すると顎関節症を発症しやすくなります。不正咬合の種類や問題点、顎関節症になるリスクについて解説します。
不正咬合とは
歯並びが悪く噛み合わせが悪い状態を「不正咬合」といいますが、不正咬合の人に多いのが、「乱杭歯」、「出っ歯」、「受け口」、「すきっ歯」、「開咬」、「上下顎前突」の6つの種類です。
不正咬合は一目見ればすぐに分かるため外見上の問題に目が向きがちですが、日常生活、健康面など様々な症状に悩まされることがあります。
【不正咬合の問題点】
・日常生活への影響:集中力低下、発音不明瞭、口内をよく噛むなど
・歯への影響:虫歯、口臭、歯周病など
・性格形成への影響:コンプレックスなど
歯並びが悪いと当然ながら上下の歯が正しく咬合できずに噛み合わせも悪くなります。不正咬合が長く続くことにより噛み合わせの悪化が進行するため、遂には「顎関節症」という怖い病気を発症することがあります。
不正咬合になる原因
では、なぜ不正咬合になってしまうのでしょうか。不正咬合になる原因は大きく3つあります。
1.遺伝によるもの
不正咬合になる原因として親からの遺伝というものがあります。しかし、母親の歯並びが悪いから、遺伝により子供も必ず歯並びが悪くなるというものではありません。
遺伝の場合には、顔の輪郭、骨格の太さ、顎の大きさ、歯の形や大きさなどを親から受け継ぎますが、そこに様々な要因が絡み合って不正咬合になると言われています。遺伝により不正咬合になるのは一説には3割程度と言われています。
2.幼児期の歯の入れ替わり
乳歯から永久歯への生え変わり時期に不正咬合を引き起こしてしまうことがあります。永久歯は乳歯に誘導されるように生えてきますが、例えば乳歯が虫歯になって早く抜けてしまうと、その空いたところに隣の歯が侵入してくることがあります。
そうなると後から生えてこようとする永久歯が自分のスペースが無いために歯列を外れて斜めに生えてくることになります。このように乳歯が抜けて永久歯が生え揃う時期が前後することにより歯並びが悪くなるケースがあります。
3.生活習慣、悪い癖によるもの
不正咬合になる原因として最も多いのが生活習慣、悪い癖によるものです。
具体的には、口呼吸、指しゃぶり、舌の突き出し、うつぶせ寝、頬杖などが挙げられます。
・口呼吸:舌の位置が悪くなる、細菌が繁殖しやすくなり虫歯になる、口腔内のバランス悪化を招く。
・指しゃぶり:指で歯を内側から押し出す癖が続くことにより歯や顎の位置がズレる。
・舌の突き出し:内側から舌で上下の歯を押し出すことで前歯にすき間ができる。
・うつぶせ寝:頭の重量で顎や歯を圧迫することで歯列が悪化する。
・頬杖:顔の外側から顎や歯を圧迫することにより歯の位置がズレる。
悪い歯並びの6つのパターン
悪い歯並びの代表的なパターンは6つに分けられます。周囲を見渡せば必ず該当する人がいるはずです。それほど、不正咬合で悩む人が多いということです。
1.出っ歯
一般的に出っ歯(上顎前突)と呼ばれる歯並びは、下の歯に比べて、上の歯が前に出てしまっている状態のことです。上の前歯が突出している場合と上顎の骨自体が前に出ているケースがあります。
出っ歯になると上下の歯がしっかり噛み合わないため、奥歯と顎関節に負担を強いる噛み癖になります。
2.受け口
出っ歯とは逆に、上の歯より下の歯が前に出てしまっているのが受け口です。
下顎前突あるいは反対咬合とも言われます。通常は人間の前歯は下の歯よりも前に出ているものですがそれが逆になっている状態です。
下の歯が前に大きく倒れていたり、下顎の骨が前に出過ぎているために受け口になります。進行すると顎がしゃくれてしまい、外見にも大きな影響が出ます。
開咬(かいこう)
軽く口を閉じた時に前歯やどこか一部の歯が上下で噛み合ってない状態が開咬です。上下の前歯に空間ができているため物が噛めないケースが多く見られます。
咀嚼の際に、しっかり噛める奥歯にばかりに頼ってしまうため歯と顎にも大きな負担をかける歯並びです。全体の歯で噛むことができないため食事がし辛く感じます。
過蓋咬合(かがいこうごう)
過蓋咬合は噛んだ時に上の前歯が下の前歯に覆いかぶさって見えなくなるくらい閉じてしまう状態です。強い過蓋咬合になると、上の前歯の後ろの歯ぐきを下の歯が噛んでしまうような状態になります。
深く噛み合うことにより、顎関節に大きな負担をかけ続けることになりますので早期の治療が求められます。
上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)
上下顎突前突(口元の突出)とは、顔のEラインよりも上下の前歯が前方に突出している状態です。上下の歯や歯槽骨が前に出ることで上下顎突出になりますが、弊害としては口が常に開いた状態になり口を閉じにくいという問題が起こります。
自然にしていても口元が出ていることで不機嫌な表情に見られてしまいます。
乱杭歯(らんぐいば)
歯の並びや生え方がガタガタになってしまった状態を乱杭歯と言います。
歯の大きさに対してアゴが小さいためにバランスが悪くなり、歯の生えるスペースがないため、デコボコな状態で生えてくるケースがよく見られます。
歯が重なり合った部分が多いため歯磨きが難しくなり虫歯になるという問題が起きます。また、笑った時などにガタガタな歯並びは見た目の悪さにも影響します。
不正咬合になるとどうなるか?
ここからは「不正咬合になるとどうなるのか?」という不正咬合が招く症状や危険性について解説します。
虫歯、歯周病への影響
不正咬合は虫歯や歯周病を招く大きな原因の一つです。
不正咬合になると、歯と歯が重なり合ったり、左右の歯の接触が増えますので、歯磨きの際に歯ブラシが十分に届かなくなります。そうなると食べかすが歯の間に残るため虫歯菌が大量に繁殖して虫歯になります。
また、虫歯になると食事の際にしっかりと咀嚼しなくなります。自然と咀嚼の回数は減るため唾液の分泌量が減ります。唾液は口腔内の細菌を洗浄したりコントロールする役割を果たしますが、咀嚼が減ることで唾液の量が減るため口腔内の抗菌作用がなくなり歯周病菌が増えて歯周病にもなりやすくなります。
発音が不明瞭になる
不正咬合になると話し声がよく聞き取れないという問題がおこります。人がしゃべるときには、舌、歯、唇、ノドチンコなどを使って音を出しているわけですが不正咬合になると歯の間から微妙な音漏れをするため発音が不明瞭になります。
特に、「受け口(下顎前突)」、「開咬」の人は、「サ行」や「タ行」の発音に問題が出てくるケースが見られます。
口腔内を傷つけやすくなる
不正咬合になると向きや形が悪い歯が口腔内粘膜を傷つけたりします。また、食事中に内側の頬を噛んでしまったり、舌を噛むなど口腔内を傷つけることが頻発します。
口腔内を傷つけないようにするため、自然と柔らかい食べ物を選ぶようになるため咀嚼回数が少なくなり顎口腔周辺の弱体化につながります。
不正咬合は顎関節症になる条件が揃っている状態
不正咬合はただでさえ歯並びが悪く噛み合わせも悪い状態です。さらに「虫歯」、「歯周病」、「口呼吸」、「ストレス」などの不正咬合の特有の病状が加わるとじわりじわりと顎関節症の発症リスクが高まることになります。
「歯の磨り減り」、「歯の欠損」、により顎の位置に偏位が起きると、噛み合わせがさらに悪くなります。それにより顎関節の痛みという局所的な症状だけでなく、頭、首、肩、腰など顎関節症が全身に波及する重度の症状を引き起こすことにつながります。
不正咬合の人は必要以上に顎関節症のリスクに備える必要があります。
不正咬合による顎関節症の疑いがあれば専門クリニックへ
ご自身が不正咬合でさらに「顎が痛む」、「顎の音が鳴る」、「口が開かない」などの症状があらわれたら顎関節症のサインです。
不正咬合を改善するために一般歯科、矯正歯科に受診されるケースもありますが上記のような症状が見られたら顎関節症の専門クリニックにご相談頂くのが確実です。
顎関節症を考慮せずに、「歯を削る」、「抜歯する」ことによりさらに症状が悪化することがあります。誤った治療を受けないためにもまずはご相談ください。新宿デンタルクリニックでは予約制の初診カウンセリングを実施しております。