口呼吸の人は顎関節症になりやすい?
人間が生きて行くための呼吸ですが、無意識に行われていることなので、自分がどのように呼吸しているか、あまり意識したことはないかもしれません。本来人間は鼻から息を吸う鼻呼吸をするようになっていますが、口呼吸をしている人は少なくありません。
口呼吸では、鼻の様にフィルターの機能を通さずに、ダイレクトに雑菌やウィルスが入ってくるため、風邪をひきやすくなったり、口の中が乾燥することで、唾液による自浄作用が減り虫歯や歯周病、口臭になりやすくなったりと、様々な弊害があります。
また、口呼吸が続くことにより顎関節症の発症につながることがあります。口呼吸と顎関節症は一見すると関係がなさそうに感じますが、口呼吸により顎関節が発症するケースがあります。「口呼吸の癖がある」「最近、顎の不調を感じる」という方は要注意です。
今回は口呼吸を続けることが、なぜ顎関節症の発症につながるのかを順序立てて解説し、最後にその予防方法についてもご紹介します。
口呼吸が顎関節を発症する理由
口呼吸が顎関節症の発症の原因になる最大の理由は、口の周りの筋肉が正しく使えないという事にあります。本来使われる口の周りや顔・舌の筋肉が口呼吸で口が閉じていない状態である為に使われず、筋肉が低下した状態になってしまいます。
筋肉低下により、下顎や舌が正常な位置から下がったり歪んだりします。そうなると、必要以上に歯と歯を噛みしめてしまったり、就寝中に歯ぎしりが強くなったりすることも考えられます。そうなることで、顎関節へかかる負担が増え顎関節症になるリスクが上がります。
口呼吸により崩れる口腔内のバランス
私たちの口腔内には舌・歯・上顎・下顎・頬の筋肉など、様々な部位によって構成されています。これら1つ1つが正常な位置にあり正しく機能することで、口腔内のバランスは保たれています。
しかし、舌や歯・頬の位置、筋力の低下などの要因が、口腔内すべてのバランスを崩してしまうことがあります。口呼吸がその原因となることがあります。
舌の位置が下がる口呼吸
普段特に意識することがない舌の位置ですが、正しい舌の位置というものをご存知でしょうか?舌の正しい位置とは、舌の先が上の前歯のすぐ後ろの歯ぐきにぴったりとくっついている状態です。鼻呼吸をしている人は舌が常にこの位置にあります。
しかし、口呼吸の人はこの舌の位置が上下の前歯の間に少しはさまっていたり、前歯の内側に常に当たっている状態が多く見られます。その理由は、口からの空気の通り道を確保するために、舌の位置を下へ下げる必要があるからです。
もし自分で意識して舌を正常な位置に戻した時に「違和感がある」、「舌が疲れる」と感じた場合には舌の位置が常に下がっており、口呼吸を日常的にしている可能性が高いでしょう。
口呼吸で頬の筋力が低下する
口呼吸の人は空気を吸い込むために口は必ず半開きの状態になります。この半開きの状態は、頬にほとんど力が入っておらず頬の筋肉が常に緩んでしまっています。つまり、口呼吸を行うことは常に頬の筋力を低下させてしまっている状態なのです。
本来であれば上へ持ち上げられているはずの頬が、筋力の低下によって下へ緩んでしまっている状態は、口腔内のバランスを崩す一因となります。
口腔内のバランスが崩れると歯列不正に
口呼吸によって、正常に保たれているはずの口腔内のバランスが崩れると、次は歯並びの異常である歯列不正を引き起こしてしまいます。舌や頬・くちびるなどの位置に異常があることで、歯を多方向から圧迫することになります。
舌や頬・くちびるが歯を圧迫してしまう
先ほど、口呼吸の人は舌の位置が上下の前歯の間に少しはさまっていたり、前歯の内側に常に当たってしまっていると説明しました。この状態は舌と歯が常に触れ合っており同時に舌で歯を内側から圧迫してしまっているのです。
また、圧迫は内側だけではありません。歯の外側はくちびると頬で覆われていますが正常な状態であれば、くちびると頬が歯を圧迫しないように適度に距離感が保たれています。しかし、頬の筋肉の低下などで口腔内の位置に異常があれば、正常なバランスは崩れ、歯の外側を覆うくちびるや頬で歯を圧迫して内側に倒れて生えてしまうこともあれば、
逆に、口を閉じないことによって、歯が外側に向かって生えてしまうこともあるのです。
主な歯列不正
口呼吸が原因で起こる主な歯列不正を紹介します。もし、いずれかが当てはまる場合は注意しましょう。
- 開咬(オープンバイト)
奥歯は咬み合っているが、前歯は咬み合わず上下の前歯に隙間がある状態の歯列不正です。上下の前歯に舌がはさまっているか、口腔内のバランスの崩れによって起きます。
- 上顎前突(出っ歯)
舌で上側の前歯を押すことが原因で起こる歯列不正です。元々ではなく、後天的に出っ歯になったという人は口呼吸が原因というケースもあります。
- 下顎前突(受け口)
舌で下側の前歯を押すことが原因で起こる歯列不正です。生まれつきではなく、後天的に受け口になったという人は口呼吸が原因というケースもあります。
口呼吸が原因による不正咬合で顎関節症に
歯並びに異常がある歯列不正は、上下の歯の噛み合わせも悪くなるということです。
上下キレイに歯が並んでいる正常な状態ならば、噛んだときの歯の衝撃を上下の歯同士が受け止め合うことができます。しかし歯列不正により噛み合わせの悪くなった歯は、上下でしっかりと噛み合う歯の本数が少ない分、1本1本の歯にかかる負担が大きくなります。また、歯列の乱れに合わせて、顎が歪んで、顎関節症を発症することもあります。
その負担は歯から顎に伝わり顎口腔周辺の負担にもつながります。そして、顎への負担が繰り返されることで顎の筋肉の損傷や顎関節のズレが起きて、その結果、顎関節症を発症してしまいます。
このような順序と原因により口呼吸の人が顎関節症になりやすい理由なのです。口呼吸をしている人は、顎関節症を発症する危険性が高いことを理解しておきましょう。
口呼吸による顎関節症の解決方法
「口呼吸をしている」「顎に違和感や痛みがある」という方のために顎関節症の予防方法をご紹介します。
鼻呼吸へ戻すことが最大の予防策
何はともあれ口呼吸を改善し鼻呼吸の習慣に戻すことが何よりの予防方法です。まずは鼻呼吸をすることを強く意識して、特に日中活動しているときには口を閉じて鼻で呼吸する癖をつけることが大切です。
口呼吸の改善-あいうえべ体操で舌や頬の筋肉を取り戻す
今まで口呼吸をしてきたは舌や頬の筋力が低下してしまっています。筋力が低下したままでは常に鼻呼吸を意識していても、自然と口が開いてしまい知らず知らずのうちにまた口呼吸してしまいます。
舌や頬を鍛えることができる「あいうえべ体操」というものを取り入れましょう。やり方はとても簡単です。
名前の通り、「あ」「い」「う」「え」「べ」と発音する時の口の形を順番に行います。「べ」の時はあっかんべーをするように舌を下へ出します。
すべての口の動作を大げさに大きく行いましょう。「あいうべ」の動きで1セット、これを1日3セット行って口呼吸を改善しましょう。
ただ、既に、顎関節に痛みがある等の症状が出ている場合は、無理に口を開けたりすることは避けましょう。悪化させる場合もありますので、専門医を受診することをお勧めします。
また、既に歯並びが悪く、そのせいで口が閉じづらく口呼吸になってしまう場合は、筋肉を鍛えるだけでは解決が難しいでしょう。その場合は、顎位矯正を含めた歯列矯正をする必要もあるかもしれません。
まとめ
普段あまり意識することがない呼吸方法ですが、口呼吸には様々な疾患リスクと顎関節症の発症の因果関係もご理解頂けたかと思います。すでに口呼吸が原因で顎関節症を発症したという場合には早期に専門家に相談すべきです。顎関節症はそのまま放置することで症状が悪化する可能性があります。
まずはご自身の辛い症状を改善されたい場合には、当院にて専門家の初診カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。新宿デンタルオフィスは、重度の顎関節症患者の方から初期症状の方まで診断アドバイスをおこなっていますので、まずはお電話からご予約ください。